- Q1 なぜ肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれているのですか?
- 肝臓は健康な状態であれば、約3分の1が働くだけで、からだの機能を維持することができると言われています。そのため、少々の症状が出た時にはすでに肝硬変や肝がんなどが進行している場合があります。
- Q2 C型肝炎ウイルス(HCV)はどのように感染するのですか?
- HCVは血液によって感染します。過去には輸血や血液製剤からの感染が多かったのですが、現在は、十分に消毒しない器具での入れ墨(タトゥー)やピアス、麻薬や覚せい剤など注射器の使い回しをした場合などが考えられます。出産時の母子感染や性交渉での感染はまれで、通常の一般的な生活で感染することはありません。
- Q3 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染している人は何歳ぐらいが多いのでしょう?
- 40歳以上にHCV感染者が多く、70歳代が最も多いです。日本のHCV感染者は150〜200万人と考えられています※1。
※1: Tanaka J et al. Intervirology 2011; 54(4): 185-195
- Q4 C型肝炎ウイルス(HCV)は学校や会社などの集団生活で感染しますか?また病院などでの医療行為(歯科含む)で感染しますか?
- 日常的な生活習慣であれば集団生活でHCVに感染することはほとんどありません。また現在、医療施設で用いられる輸血や血液製剤などはウイルスの検査精度が向上していますので、医療行為で感染することもないと考えられています。
- Q5 輸血でC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することはありますか?
- 現在は厳格なHCV感染予防のための検査が行われているため、輸血による感染はほとんどみられません。ただし平成4年(1992年)以前に輸血した方は、当時は高度な検査方法がなかったため、HCVに感染している可能性が一般の方より高いと言えます。平成4年(1992年)以前に輸血や臓器移植をされた方は、HCVの検査を受けることをお勧めします。
- Q6 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると自覚症状はでますか?
- HCVに感染すると全身の倦怠感や食欲不振、悪心、嘔吐などの症状が出る場合があります。さらに黄疸があらわれる場合もありますが、ほとんどの場合、自覚症状が出ません。知らず知らずのうちに肝硬変や肝がんに進行する危険性があります。
- Q7 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると肝硬変や肝がんになるのですか?
- C型肝炎ウイルスに感染すると約70%が慢性肝炎になるとのデータがあります※1。治療をせずに放置しておくと肝臓の線維化が進み、肝硬変、肝がんへ進行する可能性があります。日本の肝がんの50%はC型肝炎が原因とされています※2。
※1: 日本肝臓学会 肝臓病の理解のために 1慢性肝炎, 肝硬変, p.3
※2: 工藤正俊ほか, 肝臓 2016: 57: 45-53
- Q8 C型肝炎の進行度と年齢は肝がんの発症に関係しますか?
- C型肝炎の症状が進み、肝臓の線維化が進展したり、年齢が高くなるほど、発がんリスクは上昇します。C型肝炎ウイルスの排除が可能な場合はできるだけ早く治療を始め、ウイルスを排除することが大切です。
- Q9 なぜC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているか検査しなければいけないのですか?
- C型肝炎は感染しても自覚症状が出にくく、気づかないうちに肝硬変や肝がんなどの重篤な病気に進んでしまう危険性があるからです。早期発見、早期治療のためにもHCV検査が必要なのです。
- Q10 C型肝炎ウイルス(HCV)検査の費用は?
- 地方自治体が実施している検査は、原則は無料です。また、職場の健診で検査が受けられる場合もあります。ただし、自治体・事業者によって異なる場合がありますので、直接ご確認ください。
- Q11 HCV-RNA検査でウイルスの遺伝子の型を調べるのはなぜですか?
- HCVは大きく6タイプの遺伝子型(ジェノタイプ)に分類されていて、日本では1bが約70%、2aが約20%、2bが約10%の割合になっています(1aはごくわずかです)※1。この遺伝子型により治療薬の有効率に差があり、治療法が異なってくるからです。
※1: 鎌江伊三夫ほか, 肝臓 2014: 55(10): 589-603
- Q12 HCV抗体検査で「陽性」とされました。C型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているのでしょうか?
- HCV抗体検査で「陽性」の場合は、過去に感染し、現在は治癒している状態も考えられます。さらにHCV-RNA検査を受けて、「現在、ウイルス感染しているのか」調べる必要があります。HCV-RNA検査で「陽性」であれば現在ウイルスに感染しているので、専門医で精密検査を受け、肝炎の進行度等を確認し、治療方針を医師と相談してください。
- Q13 C型肝炎ウイルス(HCV)に感染していることがわかりました。どうすればよいでしょう?
- 肝臓専門医などC型肝炎に詳しい専門医を受診してください。そこで精密検査を受け、今後の治療について医師と相談してください。
- Q14 近くのかかりつけ医で治療はできないのでしょうか?
- 「病診連携」と言って、専門医とかかりつけ医が連携して治療にあたることができます。専門医の治療方針のもとに、かかりつけ医で薬の処方と日常の健康管理をしてもらいます。そして定期的に専門医で検査をして、ご自分の肝臓の状態や薬の効果等を確認し、治療を進めていきます。
- Q15 抗ウイルス治療とはなんですか?
- C型肝炎ウイルスを排除し、肝硬変、肝がんの発症を防止する治療法※1です。免疫力を高めウイルスを排除するインターフェロン(注射剤)、インターフェロンと飲み薬の併用、さらに飲み薬のみのインターフェロンフリー(直接作用型抗ウイルス薬:DAA)療法があります。
※1:ウイルスの排除によりすべての進展リスクを下げることができる訳ではありません。
- Q16 インターフェロンフリー治療とは何ですか?これまでの治療とどう違うのですか?
- 抗ウイルス治療の中で、注射薬のインターフェロンを使わず、飲み薬(直接作用型抗ウイルス剤:DAA)だけでウイルス排除を行う治療法です。DAAはC型肝炎ウイルスの複製に不可欠なたんぱく質の働きを直接阻害してウイルスの複製を強力に抑制する薬です。
- Q17 インターフェロン療法と飲み薬を併用した療法にはどのような副作用がありますか?
- インターフェロンでは発熱、倦怠感、頭痛、食欲不振など、飲み薬との併用では発疹、かゆみ、貧血などです。頻度は低いものの重篤な副作用が起こることもありますので、症状があらわれたらすぐに医師にご相談ください。
- Q18 インターフェロンフリー治療にはどのような副作用がありますか?
- 手足のむくみ(末梢性浮腫)、肝機能の指標となるALT(GPT)の上昇が見られる場合があります。手足のむくみが現れたら、医師にご相談ください。また、頻度は低いものの重篤な副作用が起きることもありますので、症状があらわれたらすぐに医師にご相談ください。
- Q19 C型肝炎の治療中、日常生活で注意する点は?
- 特別に制限することはありませんが、家族など身近な人にウイルスを感染させないよう、次の点に注意してください。
- 歯ブラシ、カミソリなど血液がつく可能性のものは、自分専用とする。
- 血液や分泌物がついたものは、袋に入れるなどして捨てる。または、流水でよく洗う。
- 外傷や鼻血などの手当てをする人に、血液や分泌物がつかないようにする。
- 乳幼児に口移しでものを食べさせない。
- 献血は控える。
- Q20 医療費の助成を受けられる期間はどのくらいですか?
- 原則1年ですが、受けている治療法やお住いの都道府県によって異なります。お近くの保健所等でご確認ください。
【監修】 大阪大学大学院医学系研究科 消化器内科学 教授 竹原 徹郎先生
2024年9月掲載
JP-MAVI-180196-12.02024年9月掲載
JP-MAVI-200030-8.0